あなたの「怖い」は正しい
経営会議で「AIで問い合わせ対応を効率化しろ」と言われた。ヘルプデスクツールの営業に問い合わせたら「月$55/agentからです」と返ってきた。5人チームだから月3万円台か。悪くない——。見積書を書き始める。
ところが、AIの詳細を調べ始めた途端、話がおかしくなる。「AI機能はオプションで$50/agentの追加です」「自動解決は1件ごとの従量課金です」「品質管理はさらに別料金です」。最初の$55はどこへ行ったのか。結局いくらかかるのか、3日調べても確信が持てない。見積書が書けないまま2週間が過ぎる——。
もしこの状況に心当たりがあるなら、この記事はあなたのために書きました。結論から言えば、ヘルプデスクAIの費用が分からないのは、あなたのせいではありません。構造的に分かりにくいのです。
そこで、主要5ツール(Zendesk・Intercom・Freshdesk・Zoho Desk・LiveAgent)のAI課金構造を実際に調べて解体し、利用パターン別の概算費用を整理しました。読み終わる頃には、見積書の数字が埋まっているはずです。
ヘルプデスクAIの「2種類」と「3つの課金モデル」
まず整理すべきは、ヘルプデスクの「AI」が2つの異なる機能を指している点です。
自律回答(AI Agent) — AIが顧客の問い合わせに直接回答し、人間の介入なしに解決する機能です。チャットボットやメールの自動返信がこれに該当します。
エージェント補助(Copilot / AI Assist) — 担当者が返信する際にAIが下書きを生成したり、文章を改善する機能です。最終的に人間が確認して送信します。
この2機能に対する課金の仕組みが、ツールによって根本的に異なります。
解決型(Zendesk・Intercom): AIが自律解決した件数に応じて課金。Zendeskは$1.50/解決、Intercomは$0.99/解決。「解決」の定義がツールごとに異なるのが厄介です。
セッション型(Freshdesk): 24時間以内のやり取りを1セッション($0.10)として課金。解決に至らなくても課金されますが、単価は解決型の1/10〜1/15です。
プラン内包+外部API型(Zoho Desk・LiveAgent): AI機能のインターフェースはプランに含まれますが、AIの「頭脳」(LLM)の費用は外部APIとして別途発生します。
以下の表で5ツールのAI機能と課金構造を一覧にまとめます。
| ツール | 自律回答 | エージェント補助 | 自律回答の課金 | 補助のAI費用 | 課金単位 |
|---|---|---|---|---|---|
| Zendesk | AI Agent | Copilot Auto-Assist | $1.50/解決 | $50/agent/月 | agent単位(全員必須) |
| Intercom | Fin AI Agent | Fin AI Compose | $0.99/解決 | $35/月 | アカウント単位 |
| Freshdesk | Freddy AI Agent | Freddy Copilot | $0.10/セッション | $29/agent/月 | agent単位(選択可) |
| Zoho Desk | Zia Answer Bot | Zia Reply Assistant | Enterprise内包 | Enterprise内包※ | プラン内包 |
| LiveAgent | AIチャットボット | AI Answer Composer/Improver | FlowHunt連携※ | OpenAI API連携※ | 利用量ベース(人数に依存しない) |
※ 詳細は次のセクションで解説します。同じ「AI搭載」でも中身がこれだけ違います。
見えないコストの全体像 — 料金表の数字は「第1層」にすぎない
ヘルプデスクAIの真のコストは4つの層で構成されています。多くの比較記事は第1層しか見ていません。
第1層: ベース料金
プラン料金 × エージェント数。ここだけなら比較は簡単です。
| ツール | プラン | 月額/agent |
|---|---|---|
| Zendesk | Suite Professional | $115 |
| Intercom | — | $85〜 |
| Freshdesk | Pro | $49 |
| Zoho Desk | Enterprise | ¥4,800(日本価格) |
| LiveAgent | Large Business | $49 |
ただしZendeskの場合、AI機能のフル活用にはAdvanced AI($50/agent/月)が必須で、さらにWFM($25)やQA($35)を加えると実質$215〜$265/agent/月になります。
第2層: AI機能の課金
ここから複雑さが始まります。
解決型の変動費: Zendeskの$1.50/解決とIntercomの$0.99/解決は、チケット量に比例して跳ね上がります。月2,000件でAI解決率40%なら、Zendeskで$1,200/月、Intercomで$792/月。繁忙月に5,000件になればそれぞれ$3,000、$1,980に。
per-agent vs 利用量ベース: エージェント補助(Copilot)の課金構造がツールによって決定的に違います。
| AI補助の費用 | 5名 | 10名 | 20名 |
|---|---|---|---|
| Zendesk Copilot $50/agent(全員必須) | $250 | $500 | $1,000 |
| Freshdesk Copilot $29/agent(選択可) | $145 | $290 | $580 |
| Intercom Copilot $35/アカウント | $35 | $35 | $35 |
| LiveAgent OpenAI API/利用量 | $5〜50※ | $5〜50※ | $5〜50※ |
※ LiveAgentのAI費用はエージェント数ではなく利用量で決まるため、人数が増えてもAI費用自体はほぼ変わりません。Zendeskは20名チームだとCopilotだけで月$1,000になります。
外部API型の内訳(LiveAgent): LiveAgentのAI機能は外部サービスと連携する構造です。
- AI Answer Improver(返信改善): OpenAI APIを使用。管理画面からLLMモデルを選択でき、GPT-4o mini、GPT-4o、GPT-4.1、GPT-5シリーズなど12以上のモデルから用途に応じて選べます。費用はOpenAI Platformの従量課金(トークン単価×利用量)です。ChatGPTのサブスクリプション(Plus/Proなど)とは別サービス・別課金であり、APIだけ使うならChatGPTの契約は不要です。
- AI Chatbot / AI Answer Composer(自動回答・回答案生成): FlowHuntとの連携で動作します。FlowHuntではOpenAI、Anthropic Claude、Google Geminiなど主要なLLMをほぼすべて選択可能。チャット1件あたり約5〜20円、メール回答1件あたり約20〜50円が目安ですが、内容の複雑さやモデルの選択で変動します。月額基本料はProプラン€50〜が現実的です。
日本語利用時の注意点: OpenAI APIは利用言語に関係なくトークン単価は同じですが、日本語は英語に比べて同じ内容でもトークン数が3〜5倍になります。そのため、英語圏の利用コスト試算をそのまま日本語に当てはめると過小評価になります。後述のシミュレーションではこの点を反映しています。
第3層: 学習・ナレッジベース構築コスト
ツールを契約しただけではAIはまともに回答できません。自社のFAQ、製品マニュアル、過去のチケット履歴を学習させて初めて実用レベルになります。この「ナレッジベース構築」こそ、比較表から最も見落とされがちなコストです。
| ツール | 学習ソース | セットアップの特徴 |
|---|---|---|
| Zendesk | KB記事、チケット履歴 | 事前学習済みモデル。KB品質が回答品質に直結。導入支援は有償 |
| Intercom | ヘルプセンター、PDF、Webクロール | Guidanceでトーンをカスタマイズ可。即時反映 |
| Freshdesk | Solution Articles、URL、PDF | UIがシンプル。URL学習は30分程度で反映 |
| Zoho Desk | ナレッジベース、FAQ | OpenAI API連携時はRAG構築が追加で必要 |
| LiveAgent+FlowHunt | Webクロール、ドキュメント取込み | FlowHuntのクレジット内で学習。定期クロール・インデックス化のコストも発生 |
「学習」は一度きりではありません。製品情報やFAQが更新されれば学習データも更新が必要です。定期的なクロールやKB記事の棚卸しは、どのツールでも継続的なコストとして発生します。
LiveAgent + FlowHuntの場合、フローの設計やナレッジベースの設定は管理画面から行えるため、IT担当者がいる企業であれば自社で対応できます。「学習データの設計から構築したい」「自社の情報をAIに最適化して、すぐ使える状態にしてほしい」という場合は、SmartWebのようなサービスが設計からFlowHuntの設定、ナレッジベースの構築・最適化までを代行しています。
第4層: 運用・メンテナンス
年次の値上げ(Zendeskでは7%/年の更新値上げが報告されています)、AIモデルのアップデートに伴う課金体系の変更、KB記事の継続的な品質管理。SaaS業界全体で見ると、2026年の年間価格上昇率の中央値は7.8%で、73%のベンダーがAI機能名目で20〜40%の追加課金を導入しています(SaaS Inflation Index 2026)。これらは年間TCOに確実に影響しますが、事前に正確に見積もることは困難です。
概算TCOシミュレーション — 3つの利用パターンで
4層すべてを含めた正確なTCOは、自社の利用パターンによって大きく変わります。ここでは、よくある3つのパターンで概算を示します。第3層(学習コスト)・第4層(運用)は含んでいませんので、あくまで予算感をつかむための出発点です。
共通前提: CSチーム5名、年契約。
パターン1: ライト利用(まずは返信改善からAI導入)
月500件の問い合わせにAI返信補助を活用。チャットボットはまだ導入しない。
| ツール | ベース | AI補助 | 合計/月 |
|---|---|---|---|
| Zendesk Suite Team + Advanced AI | $525 | — | $525 |
| Freshdesk Pro + Freddy Copilot | $390 | — | $390 |
| LiveAgent Large + OpenAI API | $245 | ~$10〜30 | $255〜275 |
LiveAgentの場合、GPT-4oで月500件の返信改善なら、日本語のトークンコストを含めても月$10〜30程度です。GPT-4.1-miniに下げればさらに安くなります。
パターン2: 標準利用(返信改善+チャットボット)
月2,000件の問い合わせ。AI返信補助に加え、チャットボットで一次対応を自動化。
| ツール | ベース + AI補助 | 自律回答 | 合計/月 |
|---|---|---|---|
| Zendesk | $525 | $1,200(800件×$1.50) | $1,725 |
| Intercom | $460 | $792(800件×$0.99) | $1,252 |
| Freshdesk | $390 | $200(2,000セッション) | $590 |
| LiveAgent | $245 + ~$30〜70 | FlowHunt €50 + ~¥10,000〜30,000 | $400〜550 |
LiveAgentの場合、FlowHuntの基本料€50に加え、チャット・メールの従量課金が発生します。チャット1件5〜20円、メール回答1件20〜50円が目安です。利用量が読みにくい場合は、FlowHuntのダッシュボードでリアルタイムにコストを確認できます。
パターン3: ヘビー利用(全チケットにAI活用、繁忙月5,000件)
| ツール | 通常月 | 繁忙月 |
|---|---|---|
| Zendesk | ~$2,275 | ~$4,075 |
| Intercom | ~$1,252 | ~$2,472 |
| Freshdesk | ~$590 | ~$740 |
| LiveAgent | ~$450〜650 | ~$600〜900 |
重要な違い: ZendeskとIntercomは繁忙月にAI費用が急膨張します(解決件数に比例するため)。LiveAgentも問い合わせ対応量が増えればAI費用は増えます——従量課金なので当然です。ただし、LiveAgentのAI費用はエージェント数ではなく、AIが実際に処理した問い合わせ量で決まります。Zendeskは10人に増員するとCopilotだけで月$500になりますが、LiveAgentは同じ問い合わせ量なら人数が増えてもAI費用は変わりません。コストの増減が「人を増やしたから」ではなく「対応量が増えたから」という、予測しやすい構造です。
なぜLiveAgentのAI費用は「透明」なのか
ここまで読んで「LiveAgentが安い」と感じたかもしれません。しかし本当の強みは「安さ」ではなく**「透明さ」と「選択の自由」**です。
使うAIモデルを自分で選べる
他のツールではAIの中身はブラックボックスです。「Advanced AI」「Freddy」という名前の裏で、どのLLMがどのバージョンで動いているかはユーザーには分かりません。
LiveAgentは違います。AI Answer Improverの管理画面では、OpenAIのモデルをGPT-3.5 TurboからGPT-5.2まで12以上のモデルから選択できます。FlowHunt経由のAI ChatbotとAI Answer Composerでは、さらにAnthropicのClaudeシリーズ、GoogleのGeminiシリーズなど、主要LLMのほぼすべてを利用できます。
これが意味することは明確です。
- 日本語品質を重視するなら、日本語性能が高いモデル(GPT-4o以上やClaude)を選ぶ
- コストを抑えたいなら、軽量モデル(GPT-4.1-miniなど)に切り替える
- 新しいモデルが出たら、管理画面から即座に切り替えて試せる
ZendeskやFreshdeskでは、ベンダーが「Advanced AI」の中身を更新するのを待つしかありません。LiveAgentなら、AIの選択権はあなたの手にあります。
費用が「利用量×単価」で計算できる
ZendeskのAdvanced AIは$50/agent/月の固定課金です。5人なら$250、10人なら$500。人が増えれば確実に膨らみます。
LiveAgentのAI費用はOpenAI APIとFlowHuntの従量課金です。使った分だけ払い、使わなければかかりません。しかもトークン単価は公開されているので、自社の利用量から予算を計算できます。
見積書に「根拠のある数字」を書けること。 これが、予算が怖くなくなる理由です。
正直に言えば、手間はかかる
公平を期すために、LiveAgentのAI導入で覚悟すべき点も述べます。
ZendeskやFreshdeskのAI機能は、契約すればすぐ使えるネイティブ統合です。LiveAgentの場合、AI Answer ImproverにはOpenAI PlatformでのAPIキー取得と設定が必要です。AI ChatbotにはFlowHuntの契約とフローの設計、ナレッジベースの構築が必要です。IT担当者がいるチームなら問題ありませんが、技術的なセットアップに不安があるなら、この手間は考慮すべきです。
また、FlowHuntは外部サービスです。LiveAgent本体とは別の会社が運営しているため、サービスの継続性やアップデートのタイミングがLiveAgentとは独立しています。この点はネイティブ統合に比べるとリスク要因です。
自社で判断するための5ステップ
- AIに何をさせたいか明確にする — 「自律回答」と「エージェント補助」のどちらが主か。両方なら優先順位は
- 月間チケット量と変動幅を把握する — 繁忙月に何倍になるか。解決型課金はここで効いてくる
- 上記の表に自社の数値を当てはめて概算する — 通常月と繁忙月の両方で。日本語利用の場合はトークンコストの割増も考慮する
- ナレッジベース構築の工数を見積もる — 自社のKBの現状は。整備にどのくらいかかるか。自社対応か外部委託か
- 候補ツールの無料トライアルで実測する — 2〜4週間で実際のAI解決率と時間短縮効果を測定する。特に解決型課金のツールは実測なしの予算組みが危険
各ツールの最新情報は公式サイトで確認してください。

無料相談
「AIの導入は気になるけど、FlowHuntの設定やナレッジベースの構築まで手が回らない」
という場合は、SmartWebにご相談ください。LiveAgent + FlowHuntの設計・構築はもちろん、運用開始後のナレッジベースのブラッシュアップや継続的な改善もお手伝いしています。
この記事の情報について: 本記事の価格・機能情報は2026年2月時点で各ツールの公式サイトおよび公開情報から取得したものです。ヘルプデスクツールのAI機能と価格体系は非常に頻繁に更新されており、この記事の公開時点ですでに変更されている可能性があります。また、各ツールの課金体系は複雑であり、公式サイトの情報に対する筆者の解釈が正確でない場合もありえます。導入を検討される際は、必ず各ツールの最新の公式価格ページを確認し、不明な点はベンダーに直接お問い合わせください。
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